21年目のパジャマ
こころ
先週だったか、着ているパジャマを夫に示して私は言った、なにげなく。
「これ、パパちゃんが買ってくれたの覚えてる?」
「うん」
別に興味もなさそうに、テレビを見ながら夫が頷いた。
「妊娠した時に買ってもらったマタニティ用なの、覚えてる」
同じように「うん」。
「毎年冬に着てるんだよ、だからね、もう21年着てるの」
「うん」。
「いいパジャマ買ってもらったからさ、色も模様も褪せてないのにさ、
ゴムのところだけ布が擦り切れてバーコードみたいに薄くなったよ。
21年も着てるってちょっとすごくない?」
「うん」夫はちょっとすごいな、という顔をした。
実は21年も毎冬着ているとは、自分でも気付いていなかった。
ゴムの部分の布地が擦り切れて、はじめて、ああもう21年も着ていたのかとびっくりし、
急に嬉しくなって、二階の夫にわざわざ報告しに行ったのだった。
21年前お腹にいた娘にも言ってみた。
毎年私が着ているのを見ていた娘はちょっとどころかかなり驚いた。
「に、にじゅういちねん!」
私はなんだかニコニコした。えへんえへん。
21年も着られるパジャマを、若い日の夫は喜んで買ってくれていたのだ。
そのときお腹に宿っていた娘が、元気にこうして成長してくれているのだ。
50歳まで生きられるとは到底想像も出来なかった私が、こうして生きていられるのだ。
このパジャマ、もうあと10年着たいな、などと、
ひとりにやにやほくそ笑んでいたら、夫が二階から降りてきた。
「今度新しいパジャマ買いにいこう」
いやいや、そんな意味ではない、と私が言うと、夫も頷いた。
そんな意味じゃなくて、買いたい気分になったから買ってあげる。
へえ、そうなんだ、パパちゃんも少し、私と同じような幸せを感じてくれたのかしらん。
ねぇ、でもさ21年着られるパジャマって、いまもきっと高いわよ、万よ、万するわよ。
いいよ、それでも。夫はそれだけ言って二階に上がって行った。
そして今日の午前中、私は夫に連れられてデパートのパジャマ売り場に行ったけれど、
21年前と違っていまは、20年も着られそうな、
しっかりしたネル生地のパジャマは見つけることが出来なかった。
ママちゃん、いいじゃん、安いのでもいいじゃん。
もう20年も着なくたっていいじゃん。
うん、そうだよね。
催事場で安く売り出していた婦人用パジャマ2枚、ふたつで5000円しない。
迷いに迷っている私を、夫は大人しく待ってくれ、買ってくれた。
うん、うれしい。ありがとう。
多分来年には毛玉だらけになりそうな、合成繊維のパジャマだけれど、
私は風呂上がりにそれを着て、またトコトコ二階に上がり
テレビを見ている夫に見せに行った。
よく似合ってます。
夫が少し笑って言った。
合成繊維は慣れてないので、少しちくちくするみたい。
でも、生地がふんわりしていて、温かい。
できるだけ、大事に着ようと思う。
21年着たパジャマも、もちろん着よう。
大事に着よう。もうこれは、捨てられそうにない。
「これ、パパちゃんが買ってくれたの覚えてる?」
「うん」
別に興味もなさそうに、テレビを見ながら夫が頷いた。
「妊娠した時に買ってもらったマタニティ用なの、覚えてる」
同じように「うん」。
「毎年冬に着てるんだよ、だからね、もう21年着てるの」
「うん」。
「いいパジャマ買ってもらったからさ、色も模様も褪せてないのにさ、
ゴムのところだけ布が擦り切れてバーコードみたいに薄くなったよ。
21年も着てるってちょっとすごくない?」
「うん」夫はちょっとすごいな、という顔をした。
実は21年も毎冬着ているとは、自分でも気付いていなかった。
ゴムの部分の布地が擦り切れて、はじめて、ああもう21年も着ていたのかとびっくりし、
急に嬉しくなって、二階の夫にわざわざ報告しに行ったのだった。
21年前お腹にいた娘にも言ってみた。
毎年私が着ているのを見ていた娘はちょっとどころかかなり驚いた。
「に、にじゅういちねん!」
私はなんだかニコニコした。えへんえへん。
21年も着られるパジャマを、若い日の夫は喜んで買ってくれていたのだ。
そのときお腹に宿っていた娘が、元気にこうして成長してくれているのだ。
50歳まで生きられるとは到底想像も出来なかった私が、こうして生きていられるのだ。
このパジャマ、もうあと10年着たいな、などと、
ひとりにやにやほくそ笑んでいたら、夫が二階から降りてきた。
「今度新しいパジャマ買いにいこう」
いやいや、そんな意味ではない、と私が言うと、夫も頷いた。
そんな意味じゃなくて、買いたい気分になったから買ってあげる。
へえ、そうなんだ、パパちゃんも少し、私と同じような幸せを感じてくれたのかしらん。
ねぇ、でもさ21年着られるパジャマって、いまもきっと高いわよ、万よ、万するわよ。
いいよ、それでも。夫はそれだけ言って二階に上がって行った。
そして今日の午前中、私は夫に連れられてデパートのパジャマ売り場に行ったけれど、
21年前と違っていまは、20年も着られそうな、
しっかりしたネル生地のパジャマは見つけることが出来なかった。
ママちゃん、いいじゃん、安いのでもいいじゃん。
もう20年も着なくたっていいじゃん。
うん、そうだよね。
催事場で安く売り出していた婦人用パジャマ2枚、ふたつで5000円しない。
迷いに迷っている私を、夫は大人しく待ってくれ、買ってくれた。
うん、うれしい。ありがとう。
多分来年には毛玉だらけになりそうな、合成繊維のパジャマだけれど、
私は風呂上がりにそれを着て、またトコトコ二階に上がり
テレビを見ている夫に見せに行った。
よく似合ってます。
夫が少し笑って言った。
合成繊維は慣れてないので、少しちくちくするみたい。
でも、生地がふんわりしていて、温かい。
できるだけ、大事に着ようと思う。
21年着たパジャマも、もちろん着よう。
大事に着よう。もうこれは、捨てられそうにない。
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