あらしの前

いろいろ感じたこと
07 /10 2014
娘が4月に社会人になって3ヶ月。
仕事はハードでお給料も少ないが、なにより非常に幸福なことに、
会社での人間関係はすこぶるよろしい様子なので
親としてはほぼ全的に安堵している。

ところで今日は娘には休日であったのだが、明日の朝の台風関東通過に備えて
娘は今夜職場に泊まる。
台風の影響で交通の便が乱れ、朝から右往左往するよりは
無給でも泊まるほうが楽だからとけろりと言う。
カネカネカネカネ言わない子に育ってくれたことが、ちょっとうれしい。

「お友達も今晩泊まるって言うから、夕食は居酒屋行くんだ、お泊り会気分だよ~」
今日は自主的宿泊、明日の夜は当番としての泊まりで計2泊になるのだが
それすら苦痛でないくらい、娘は職場に恵まれている。

ふむふむそれじゃあ気をつけて、いっといで・・・と娘を送り出して10分もしただろうか。

ばたばたと娘が帰ってくる音がして、玄関に入るなり泣き出した。
娘は震え、怯えて泣いた。

うちから100メートルほど行った道、ゴミ捨て場の近くにご近所の大型犬がひっくり返っていたという。
台風が来る前の異常な気圧と暑さの中で、熱中症でも起こしたのかと思ったら、
飼い主がすがって「起きて起きて」と泣き叫んでいたそうだ。

しゃくりあげる娘の話を総合すると、犬は散歩に出て数歩のところでひっくり返り
瞳孔を開き、よだれや尿をたらして一瞬苦しんだ後、事切れたらしい。
近所の犬を飼っている家の人々がわらわら出てきて、心配したり
獣医の手配をしたり、あれやこれやとあったという。

飼い主は「起きて一緒にケーキ食べようよケーキ食べようよ」と何度も犬に呼びかけていた。
近所の人の言うには、今日午前中、
飼い主と犬はペットショップに犬用ケーキを買いに行ったらしかった。
何かの記念日、誕生日だったのだろうか。

娘はたちまち去年の3月、愛犬が最初の発作を起こしたときの、
かつての自身のリアルな感情に身を縛られた。
のみならず、命が物質へと変貌していく様子を重ねるように目に焼き付けてしまった。
さらに飼い主の繰り返される「起きて、死なないで」の悲痛な声がかぶさったのだから
娘が平常心を失い、よたよたと家に帰ってきたのは、もう仕方がなかった。

聞いちゃった、何度も起きて、起きてって、揺らして、でも起きないの
瞳孔開いて、おしっこもらして、抜け殻みたいになって、
怖いよぅ、怖いよ、いやだよ、いやだよ。
娘は小さい子みたいに玄関で立ったままに泣き、私はそんな娘を抱きしめていた。

とにかく家に上げて、甘い飲み物を飲ませた。
ちび犬が心配そうに娘のひざに上がっていき
黒オス犬も娘の異常事態を感じてそっと近寄った。

私は娘が落ち着くのを待って少し話した。
それから当たり前に声を出して神様に祈った。
さきほど突然死んだらしい大型犬のため
悲嘆のどん底に突き落とされただろう飼い主に少しでも癒しが与えられるため。
そして娘が落ち着くように。

祈っている途中、自分の手が分厚く巨大化してくる感覚に陥った。
心を乱した娘は、道端で妙なものに憑かれて帰宅したらしかった。
ゴミ捨て場前での出来事だったらしいから、あのあたりにいた奴等だろう。
離れなさいと言っても、あっさり離れなかったので
イエス・キリストの名前で命じてみると、すうっと引いていった。
泣くほど心を乱すと、ろくなことはない。

娘は次第に冷静に戻り、新たに十字架のネックレスを出してきて身に着けると
職場に向けて再び家を出て行った。


突然死んでしまった大型犬の飼い主さん家族に、どうか慰めが与えられんことを。
心から。

じきに台風が来る。





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疲労は恐怖を駆逐する

いろいろ感じたこと
07 /17 2014
昨日夜、テレビをつけたら夏の恒例「怖い話」特番をやっていた。

最近くそ暑いせいか、この手の話がわりと好きなワタクシ。
心霊スポットうんぬんとやっていたので最近仕入れた話なんぞをさっそく
家族に語ってみた。

わが町の郊外の一角に誰も住まない家があり
なんとそこが関東圏ではナンバーワンクラスの心霊スポットだという。

認知症の爺さんを面倒見てたお婆さんが
ついに切れたのか、爺さんを殺して家に火をつけて云々で
その廃屋にはお化けさんが出る・・・・。

ネットにはその廃屋がテレビで放送された際の動画もあれば
写真を撮れば怖いものが写るといううわさも山のように存在する。

・・のでいかにも本当みたいだが
実際この町に住む私と同世代によると
「やさしい穏やかなおばあさんで飴とかもらった」
「あの家が燃えた記憶ってないよ」
だそうである。
都市伝説がマスコミに取り上げられると
関東圏ナンバーワンクラスの心霊スポットになってしまうようだ。

と家族にそれを語った後に
心霊特集をやっているテレビの前に
どれどれと腰を落ち着けると横手から娘が難癖をつけてきた。

「そんなもん見たら私病院に泊まれなくなるからやめてっ!」
(病院に泊まるとき怖いのは、お化けよりも人間だと言ってたのになぁ)

基本その手の話を怖がる夫は先ほど話したわが町の心霊スポットについて
怖がり始めた。
「え~、あの家そうなの? え~、やだ、あっちはもう通らない!」
(わが町の心霊スポットは中学校の隣にあり、
夫はその中学のテニスコートを時々使っているのだ)

フフフと笑いながら私はお化けのテレビの声を落として視聴し続ける。

・・・・そんなに怖いかな、これ?
・・・・作り物っぽいんだけど
・・・・う~ん脅し文句すげえな
・・・・これより「もののけ姫」の「たたり神」のほうが怖い気がするけど。
・・・・うん、つくりものならエイリアンのほうが怖いな

あの手の番組の素材は、たぶん半分以上が製作品なのだろう。
素人が作ったのかもしれないし、プロの手によるものかもしれないが。
3日連続して通院だの仕事だので疲労疲弊していたワタクシは
1ミリの怖さすら覚えず、その後普通に風呂に入り
普通に暑がり、熱帯夜にぶうたれつつ、お化けさんがたのことはきれいに忘れて
アイスノンを枕に眠りについたのであった。
(しかも夜中に暑さと足の攣りに数回目覚めた)

疲労は恐怖を駆逐する、だはは。



借金苦と離婚

いろいろ感じたこと
07 /26 2014
朝ドラ、「花子とアン」では伯爵家の外腹である蓮子サマが、
駆け落ちして忍んでいる友達の故郷から、
実家に引き戻されている真っ最中というところだが、
うん、考えてみればこの蓮子サマと言う人はなかなかの宿命を生きている。

伯爵家のお大臣と芸者との間に生まれた蓮子サマは
生まれてすぐに伯爵家に引き取られて、
とりあえず乳母みたいなのに育てられ、
15歳で政略的結婚の道具に使われて結婚し、
子供を生んだら子供をとられて離縁されて、
25歳になるとまた金のためにうんと年上の石炭王に嫁がされて・・・・

なんて書くといろいろかわいそうな気もするが、
その間、金にも飯にも困ったことはなく、
わがまま放題のお姫サマ的な暮らしだけは維持されてきたわけだ。

「わがまま放題のお姫サマ」のうえに、「とらわれの」とか「鳥かごの中の」とかいった
悲劇的な修飾をつけるのが蓮子サマのお気に入りらしいのだけれども
こういう状況の「悲しみ」を身にしみてはっきり理解できる人というのは
すでに他界した元イギリス皇太子妃「ダイアナさん」レベルのハイソな人たちではないかしらん。
庶民とは悲しみの次元が異なるんだわなぁ。

・・・などと書いたのは、朝ドラを見終わってまもなく、借金苦ブログをいくつも読んだからだ。

借金苦といっても、ギャンブルや投資の失敗や
購買欲が強すぎて借金まみれとかいうものに対しては、あまり感情が動かない。

しかし夫が失職して生活費が足りないとか、夫が悪いやつで生活費をくれないとか、
なおかつ子供がかなりいい子で、
なんとか上の学校に行かせたいがために仕方なく借金しているとか、
そういう場合の借金苦に対しては、心がかなり動く。

生活費をくれない上に、暴力を振るわれ、暴言を吐かれ、
散々ひどい目に遭っているのになぜ離婚しないのか、
借りた金すら夫に奪い取られながらも、
なぜ借金を続けるのか、
それを理解できない人々が大半だろうし
理解できないほうが絶対に幸せだと思うけれども、
上述のような状況での借金苦を抱える家庭は、いまも昔もそれほど少なくはない。

私の育った家も、
「いっそみんなで死のう」とか「夜逃げしよう」とか
「怖い人たちが取立てに来る」とか
「あんなに苦労させられてなんで離婚しないの」という程度には借金苦だった。

母は借金の原因である父となぜ離婚しないのか、しなかったのか、
ものごころついて以降の私はずっと疑問に思っていたが
今もその答えはわからない。

しかし、母は離婚しなかった。
添い遂げる意思があったわけではない。

母は父が死ぬ前から同じ墓に入るのは拒絶していたし、
言葉の上では離婚へ意思を何度も見せていた。
しかし実際的に離婚はなされなかった。

借金の支払いに追われ、日々の生活に精一杯で、
物理的に離婚できなかったのだろうし、
抱えるものの重さで他に面倒や手間を増やす余裕も持てなかったのだろう。

果たされなかった悔いへの怒りは凄まじく
認知症初期の母の、死の床にある父に対する猛烈な憎悪といったら、
人というより悪魔に近かった。
いま思うと、好き勝手なことをして生きて、勝手に弱って死んでいく父が
母は心底許せなかったのだろう。
母に離婚のための体力気力すらも奪うほどの苦労をさせ続けて、
勝手に死んでゆく父が。

いま借金苦で苦労しながら子を育て
いつか必ず離婚してやろうと考えている多くの主婦たちへ私は言いたい。

いつか離婚する、では遅いのだ。
いまから動かないと、結局苦労しすぎて、離婚にかかるエネルギーすら失ってしまう。
離婚は年をとってからではもう遅すぎる。
母のように、そんな体力と意思と気力が続かないかもしれないから。

別れるべき相手とは、それを最優先事項として、別れるべきだ。
そういう男女の間に育てられた子供の一人として、私はそう考える。