あらしの前
いろいろ感じたこと
娘が4月に社会人になって3ヶ月。
仕事はハードでお給料も少ないが、なにより非常に幸福なことに、
会社での人間関係はすこぶるよろしい様子なので
親としてはほぼ全的に安堵している。
ところで今日は娘には休日であったのだが、明日の朝の台風関東通過に備えて
娘は今夜職場に泊まる。
台風の影響で交通の便が乱れ、朝から右往左往するよりは
無給でも泊まるほうが楽だからとけろりと言う。
カネカネカネカネ言わない子に育ってくれたことが、ちょっとうれしい。
「お友達も今晩泊まるって言うから、夕食は居酒屋行くんだ、お泊り会気分だよ~」
今日は自主的宿泊、明日の夜は当番としての泊まりで計2泊になるのだが
それすら苦痛でないくらい、娘は職場に恵まれている。
ふむふむそれじゃあ気をつけて、いっといで・・・と娘を送り出して10分もしただろうか。
ばたばたと娘が帰ってくる音がして、玄関に入るなり泣き出した。
娘は震え、怯えて泣いた。
うちから100メートルほど行った道、ゴミ捨て場の近くにご近所の大型犬がひっくり返っていたという。
台風が来る前の異常な気圧と暑さの中で、熱中症でも起こしたのかと思ったら、
飼い主がすがって「起きて起きて」と泣き叫んでいたそうだ。
しゃくりあげる娘の話を総合すると、犬は散歩に出て数歩のところでひっくり返り
瞳孔を開き、よだれや尿をたらして一瞬苦しんだ後、事切れたらしい。
近所の犬を飼っている家の人々がわらわら出てきて、心配したり
獣医の手配をしたり、あれやこれやとあったという。
飼い主は「起きて一緒にケーキ食べようよケーキ食べようよ」と何度も犬に呼びかけていた。
近所の人の言うには、今日午前中、
飼い主と犬はペットショップに犬用ケーキを買いに行ったらしかった。
何かの記念日、誕生日だったのだろうか。
娘はたちまち去年の3月、愛犬が最初の発作を起こしたときの、
かつての自身のリアルな感情に身を縛られた。
のみならず、命が物質へと変貌していく様子を重ねるように目に焼き付けてしまった。
さらに飼い主の繰り返される「起きて、死なないで」の悲痛な声がかぶさったのだから
娘が平常心を失い、よたよたと家に帰ってきたのは、もう仕方がなかった。
聞いちゃった、何度も起きて、起きてって、揺らして、でも起きないの
瞳孔開いて、おしっこもらして、抜け殻みたいになって、
怖いよぅ、怖いよ、いやだよ、いやだよ。
娘は小さい子みたいに玄関で立ったままに泣き、私はそんな娘を抱きしめていた。
とにかく家に上げて、甘い飲み物を飲ませた。
ちび犬が心配そうに娘のひざに上がっていき
黒オス犬も娘の異常事態を感じてそっと近寄った。
私は娘が落ち着くのを待って少し話した。
それから当たり前に声を出して神様に祈った。
さきほど突然死んだらしい大型犬のため
悲嘆のどん底に突き落とされただろう飼い主に少しでも癒しが与えられるため。
そして娘が落ち着くように。
祈っている途中、自分の手が分厚く巨大化してくる感覚に陥った。
心を乱した娘は、道端で妙なものに憑かれて帰宅したらしかった。
ゴミ捨て場前での出来事だったらしいから、あのあたりにいた奴等だろう。
離れなさいと言っても、あっさり離れなかったので
イエス・キリストの名前で命じてみると、すうっと引いていった。
泣くほど心を乱すと、ろくなことはない。
娘は次第に冷静に戻り、新たに十字架のネックレスを出してきて身に着けると
職場に向けて再び家を出て行った。
突然死んでしまった大型犬の飼い主さん家族に、どうか慰めが与えられんことを。
心から。
じきに台風が来る。
仕事はハードでお給料も少ないが、なにより非常に幸福なことに、
会社での人間関係はすこぶるよろしい様子なので
親としてはほぼ全的に安堵している。
ところで今日は娘には休日であったのだが、明日の朝の台風関東通過に備えて
娘は今夜職場に泊まる。
台風の影響で交通の便が乱れ、朝から右往左往するよりは
無給でも泊まるほうが楽だからとけろりと言う。
カネカネカネカネ言わない子に育ってくれたことが、ちょっとうれしい。
「お友達も今晩泊まるって言うから、夕食は居酒屋行くんだ、お泊り会気分だよ~」
今日は自主的宿泊、明日の夜は当番としての泊まりで計2泊になるのだが
それすら苦痛でないくらい、娘は職場に恵まれている。
ふむふむそれじゃあ気をつけて、いっといで・・・と娘を送り出して10分もしただろうか。
ばたばたと娘が帰ってくる音がして、玄関に入るなり泣き出した。
娘は震え、怯えて泣いた。
うちから100メートルほど行った道、ゴミ捨て場の近くにご近所の大型犬がひっくり返っていたという。
台風が来る前の異常な気圧と暑さの中で、熱中症でも起こしたのかと思ったら、
飼い主がすがって「起きて起きて」と泣き叫んでいたそうだ。
しゃくりあげる娘の話を総合すると、犬は散歩に出て数歩のところでひっくり返り
瞳孔を開き、よだれや尿をたらして一瞬苦しんだ後、事切れたらしい。
近所の犬を飼っている家の人々がわらわら出てきて、心配したり
獣医の手配をしたり、あれやこれやとあったという。
飼い主は「起きて一緒にケーキ食べようよケーキ食べようよ」と何度も犬に呼びかけていた。
近所の人の言うには、今日午前中、
飼い主と犬はペットショップに犬用ケーキを買いに行ったらしかった。
何かの記念日、誕生日だったのだろうか。
娘はたちまち去年の3月、愛犬が最初の発作を起こしたときの、
かつての自身のリアルな感情に身を縛られた。
のみならず、命が物質へと変貌していく様子を重ねるように目に焼き付けてしまった。
さらに飼い主の繰り返される「起きて、死なないで」の悲痛な声がかぶさったのだから
娘が平常心を失い、よたよたと家に帰ってきたのは、もう仕方がなかった。
聞いちゃった、何度も起きて、起きてって、揺らして、でも起きないの
瞳孔開いて、おしっこもらして、抜け殻みたいになって、
怖いよぅ、怖いよ、いやだよ、いやだよ。
娘は小さい子みたいに玄関で立ったままに泣き、私はそんな娘を抱きしめていた。
とにかく家に上げて、甘い飲み物を飲ませた。
ちび犬が心配そうに娘のひざに上がっていき
黒オス犬も娘の異常事態を感じてそっと近寄った。
私は娘が落ち着くのを待って少し話した。
それから当たり前に声を出して神様に祈った。
さきほど突然死んだらしい大型犬のため
悲嘆のどん底に突き落とされただろう飼い主に少しでも癒しが与えられるため。
そして娘が落ち着くように。
祈っている途中、自分の手が分厚く巨大化してくる感覚に陥った。
心を乱した娘は、道端で妙なものに憑かれて帰宅したらしかった。
ゴミ捨て場前での出来事だったらしいから、あのあたりにいた奴等だろう。
離れなさいと言っても、あっさり離れなかったので
イエス・キリストの名前で命じてみると、すうっと引いていった。
泣くほど心を乱すと、ろくなことはない。
娘は次第に冷静に戻り、新たに十字架のネックレスを出してきて身に着けると
職場に向けて再び家を出て行った。
突然死んでしまった大型犬の飼い主さん家族に、どうか慰めが与えられんことを。
心から。
じきに台風が来る。
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