覚悟なんかできない

わんこ
08 /21 2015
犬の話。

白メスわんこが死んだのは2013年の春だった。
ここには白わんこの最後のひと月が記録されている。
(だからこのブログは消さないのさ)

その後2年半、ほぼ同い年の黒オスわんこは
その穏やかな性質のおかげか、穏やかな老年を過ごし
食欲も、散歩も、非常に元気といえる。

そのせいか、私は次第に
黒オスは20歳くらいまで生きるのではなかろうか、
と思うようになり、
そうであってほしいという潜在的な意識が、
うん、きっとこの子は元気で、逝くときはころっとに違いない、きっとだ。
と信じ込んでいた。

その黒オスの様子に、今日変化が起きた。
いつも昼間はほとんどうつらうつらしている黒オスが
先ほど昼ごろ、伏せてまどろんでいた体勢から起き上がろうとして
足が絡んだのか、力が入らなかったのか、それとも血圧が整わなかったのか
バランスを崩してじたばたと床に倒れこんでしまった。

黒オスはすぐにもう一度立ち上がろうとしたが
また同じようにバランスを崩し、大きくじたばたして倒れた。

黒オスは混乱して、恐怖したのだろう。
横に倒れた姿勢のまま、おしっこをしゃあともらした。

脳をやられて24時間ぐるぐる回り続けた白メスが
倒れこんだ姿と重なった。
困る、困る、そうならないでくれ、と私は願いながら
何が起きたのかわからぬままにしっかり目を開けて横たわっている黒オスに声をかけ
何度も何度も頭をなでた。

5分ほど経過しただろうか、黒オスはふらっとしながら立ち上がった。
そしてゆっくりと、足元や場所や、周囲を確認するかのように歩いて
しばらく心が落ち着かず揺らいでいる模様だった。

この子はやはり老いていて、弱っていた。
この犬が私たち家族に笑いと愛とぬくもりとよろこびをくれて、
もう何年も過ぎた。
あとどれくらい、この子は生きていてくれるのだろうか。
そう思わずには居られない。

犬を飼う、犬を愛することは、ある種の覚悟が必要なのだと
つくづく思う。
でも覚悟なんかできない。
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黒わんこ、咳始まる

わんこ
08 /24 2015
黒オスわんこのこの記事が果たして終末の記録になるのかどうかまだわからない。
ある日ひょっこりしゃきーんとすることがあるかもしれない。

それともこの子は、「そうなるものだ」と言う道をごく当たり前に、進みつつあるのだろうか。

黒オス犬は前回の記述の日の夜から、もうひとつの症状を見せ始めた。
繰り返す「咳」である。

その咳は「こんこん」でもなければ「はくしょん」でもなく
のどの奥に絡んだものを吐き出そうとする「かーっ、ぺっ!」と言うやつである。
「かーっ、ぺっ!」と言う音を全身全霊を掛けて出し、
「かーっ、ぺっ! かーっ、ぺっ! かーっ、ぺっ!」「かーっ、げげげげっ!」「ぐぉおおおおっ、ぺっぺっ!」
何度も繰り返すので、非常にやかましい。
昼間はまだ1時間に1度程度だが、
夜は30分に1度以上、この発作のような咳を出す。
まるで吼え声のように、家族は何度も目を覚まされる。

十年以上前、かつて私が拾ったころには、黒オスはすでにフィラリア症だった。
フィラリアはすでに心臓か肺に達しているらしく、
投薬しても死ぬ可能性があると言われたが、私は投薬を選んだ。
黒オスは当時、「かーっ、ぺっ!」を、ときどき起こした。
そして次の年の検査で、黒オスの体にはフィラリアが無くなっていた。
「吐き出したとしたら、ものすごく苦しんだはずです」と医師に驚かれた。

今、黒オスはまた、体のなかの不調を吐き出そうとしている。
年老いて弱り、消えていたフィラリアが再び発症したのかもしれないし、
肺に水がたまっているのかもしれない。
単純に気管支炎で、のどが不快なのかもしれない。

とにかくこの黒オスは、体の不調に関しては非常にしつこい子で、
堅い体を無理に曲げていると思ったら腰に出来た脂肪の塊を
かじり取ってしまっていたり、
お尻が痒いのかやたらに舐めて、ついには大きく裂傷を作ってしまったりした。

今回も黒オスは体の不快が取れるまで「かーっ、ぺっ!」を止めはしないだろう。
のどが切れて、血を落としさえするが、黒オスは一向にひるまない。
普段は従順でおっとりした子のこの唯一の強い意思が、これなのだ。

散歩の意思もあるし、尻尾も振るし、精神に異常な状態は見えない。
ただ、咳で疲れてか、あるいはのどが腫れたか、食べ物をなかなか受け付けなくなった。
水はまだ良く飲む。

もしもこの状況が外飼い犬に起きていたら、飼い主はあまり気づかないかもしれない。
食べなくなったね、年なんだろうね、で済むのかもしれない。
大好きなから揚げを買ってきてやってみたが、1個食べるのが精一杯だったようだ。

ああ、この子も「生きるか死ぬか」を自分で決めるのか。
それともこうやって食事を減らして自己を枯れさせてゆくのが自然の姿なのか。

ともかく、今夜もこの遠慮のない咳は続き、家族はみな完全な寝不足となるだろう

犬に対する医療行為

わんこ
08 /30 2015
うちの黒わんこのことを案じてくださっている方々がいるので
その後のことを書いて、ご報告。

関東が台風の間接的な影響に巻き込まれて、すっかり秋の気温になり、
家の中の湿度が90パーセントマックスと言う状態になったのも幸いしたのか
わんこのひどい「がーっ、ぺっ、げほっ、ぐぇっ!」咳は徐々に収まった。

しかし、食欲はなかなか戻っては来ない。
工夫して黒わんこの好きなものをちゃんと調理して出してやっても
一口も食べずにそっぽを向かれ、
てめえ犬の分際で! と、ときどきかなり腹が立つこともあり、
人間が忍耐を試され続けている状態が続いている。

それでも、ほんの少し食べてくれたりすれば
馬鹿な人間は「よく食べたねぇ、いい子いい子!」と撫でて褒めまくっている。

娘は泊まりの日も帰ってきて、朝の4時に起き、職場へ行っている。
黒わんこは娘が一番好きで、娘の手のひらから一番食べてくれるからだ。

恋人もあり、その気になればいつでも結婚できるくらいに
相手との関係は熟しているけれども
娘はきっぱりと「一番大事なのは犬」と言い切る。
彼氏のために4時起きを続けることは難しくとも
犬のためなら、頑張ってそれを続けることが出来るらしい。

少しでも食べてくれているこの状態が続けば、黒わんこはまだ逝きはしないと思う。
たぶん5キロくらいはやせたと思うけれど、黒わんこは咳のあったころも今も
毎日喜んで2回きちんと散歩に出て、家での状態と比例しないくらい元気に歩いてくれている。

血まで吐いたひどい咳に、医者に行くことも頭をよぎったのだけれど、
黒わんこは今回結局医者には見せなかった。

2年前に死んだ白わんこが「てんかんの薬」を初めて飲んで以降
死ぬまでぐるぐる歩き
一切の飲食をやめてしまった事例を思うにつけ、
正直な話、犬にどこまでの医療行為を行っていくべきか
強い疑問が残っている。

黒わんこの今回の回復の例は、きっと幸運なこと、神様の恵みによるものだろう。
ネットで見ると黒わんこのように老齢で、あのタイプの咳をする場合
心臓の疾患が多いとあった。
そういえば周囲の年をとったわんこさんたちの多くが、心臓系の薬を持続的に飲まされている。

わんこを家族の1人と考えている人々にとって、
わんこの健康はもちろん大切で、それを損なうなら医療行為も当然なのかもしれない。
しかし、動物のための医学、薬学はまだ
人間の医学ほどには進んでいないし、標準化も安定もしていない。

十代からの難病である自分の体を顧みれば、
まさに医学の力によってここまで生きながらえてたからこそ
患者側にどれほどの無理が強いられ、どれほどの忍耐をし続ける必要があるかを
思ってしまうのだ。

しかも犬は言葉を持たない。
痛いとも、嫌だとも、入院で飼い主と離れたくないとも言えない。

いったいどこまでが適切な選択なのか。

とりあえず今現在、我が家の黒オスわんこは、細い細い食欲のまま
静かに、ときどき咳き込みながら、のんびりと私たち家族とともにいる。
このまま、静かに、穏やかに、行けたらそれが最善であると考えている。